微分方程式で大学物理の基本を制す Part2
皆さんこんにちは!
今回は微分方程式についてのお話の第2回です!
前回の記事を読んでいないという方はそちらも合わせて読んでみてください!
それでは今回のお話を始めていきましょう!
今回は、鉛直投げ上げ、斜面の運動、空気抵抗がある場合の解法についてお伝えします!
3. 鉛直投げ上げと斜面の運動 (一階斉次線形微分方程式)
3.1 鉛直投げ上げ
前回は自由落下を扱いましたが、今回は自由落下に少し条件が加わったもの、鉛直投げ上げの解法をお伝えします!
まず、自由落下と鉛直投げ上げの違いを復習しておきましょう!
これらの違いは、
上向きの初速度$v_0$があるかないか
ですね!
微分方程式では、この初速度の違いを「初期条件」として扱います!
つまり、
自由落下:$v(0)=0$
鉛直投げ上げ:$v(0)=v_0$
となるということです!
ちなみに、$v(0)$というのは$t=0$での$v$の値という意味です!
加速度$a$→速度$v$
では、前回と同様に微分方程式を解いていきましょう!
鉛直投げ上げの場合もはたらいている力は重力のみで、運動方程式は自由落下と同じなので、
$$
m\frac{d^{2}x}{dx^{2}}=-mg
$$
となります! これを変形して、
$$
\frac{dv}{dt}=-g
$$
両辺に$dt$をかけて、
$$
dv=-gdt
$$
ここまでは前回と全く同じです!
この後定積分を行うのですがここで違いが生まれてきます。
$$
\begin{align}
\int_{v(0)}^{v(t)}dv &=-g\int_{0}^{t}dt\\
v(t)-v(0) &=-g(t-0)\\
\end{align}
$$
自由落下の場合は、$v(0)=0$なので、
$$
v(t)=-gt
$$
となりますが、鉛直投げ上げの場合は、$v(0)=v_0$なので、
$$
\begin{align}
v(t)-v_0 &=-gt\\
v(t) &=v_0-gt
\end{align}
$$
となります!
これは、まさに高校物理で覚えさせられた鉛直投げ上げの式ですね!
これが自由落下と鉛直投げ上げの式の違いの正体です!
速度$v$→位置$x$
速度$v$→位置$x$についても同じように見ていきましょう!
$$
\begin{align}
\frac{dx}{dt} &=v_0-gt\\
dx &=(v_0-gt)dt
\end{align}
$$
両辺積分して、(初期条件:$x(0)=0$)
$$
\begin{align}
\int_{0}^{x(t)}dx &=\int_{0}^{t}(v_0-gt)dt\\
x(t) &=v_0t-\frac{1}{2}gt^2
\end{align}
$$
となります!
これもまさに高校物理で覚えさせられた鉛直投げ上げの式ですね!
というわけで、ポイントは「初期条件」です!
運動方程式を立てるときは、力とともにこの初期条件にもぜひ注目してみてください!
3.2 斜面の運動
では次は高校物理でもお馴染みの斜面の運動について見ていきましょう!
まず、斜面の運動で最も重要になってくるのは、
力の分解
ですね!
次の図のように斜面に垂直な方向と平行な方向に分解します!
すると、運動方程式は次のようになるでしょう!
$$
m\frac{d^{2}x}{dx^{2}}=mg\sin\theta
$$
今回は運動の方向(斜面を下る向き)を正に取りました。
これを変形して、
$$
\begin{align}
\frac{dv}{dt} &=g\sin\theta\\
dv &=g\sin\theta dt
\end{align}
$$
この後両辺を積分するのですが、ここで注意が必要です。
それは、
$\theta$は変数ではない
ということです。
$\theta$はあくまで斜面の傾斜であり、今回の話では、傾斜が時間によって変化するということはありません。
そのため、$\theta$は定数として扱い、積分の外に出して考えます!
新たな文字が出てくるとやはり変数だと思いがちですが、文字の表しているものが何かをしっかり見極めるようにしましょう!
そのため、初期条件を$x(0)=0$ $v(0)=0$(静かに手を離した場合)としたときの解法は次のようになります!
$$
\begin{align}
\int_{0}^{v(t)}dv &=g\sin\theta\int_{0}^{t}dt\\
v(t) &=g\sin(\theta) t
\end{align}
$$
位置$x(t)$についても同様に、
$$
\begin{align}
\frac{dx}{dt} &=g\sin(\theta) t\\
dx &=g\sin(\theta) tdt\\
\int_{0}^{x(t)}dx &=g\sin\theta\int_{0}^{t}tdt\\
x(t) &=\frac{1}{2}g\sin(\theta) t^2
\end{align}
$$
となります!
実は、自由落下の式に$\sin\theta$がついただけなんです!
でもよく考えたらわかると思います。
物体にはたらく力が$mg$から$mg\sin\theta$に変わっただけですから!
3.3 一階斉次線形微分方程式
ここまで見てきた自由落下、鉛直投げ上げ、斜面の運動はすべて
一階斉次線形微分方程式
というカテゴリーのものになります!
「一階」は出てくる微分が1階微分まで
「斉次」は(右辺)=0
「線形」は左辺が(1階微分)+(0階微分)のような足し算で表せる
という意味になります!
簡単に表すと、
$$
\frac{dx}{dt}+at=0
$$
という形です!($a$は定数)
「え?そんな形になってなくない?」って思うかもしれませんが実はこの形になっています!
例えば自由落下の速度$v$と位置$x$の関係式
$$
\frac{dx}{dt}=-gt
$$
これの右辺を左辺に移項すると、
$$
\frac{dx}{dt}+gt=0
$$
$g$は定数なのでまさに上記の形になっていますね!
他の式もこのように移行すると右辺が0となります!
(加速度と速度の関係式は正確にはこの形ではありませんが、同じ解法で解くことができるので同じものとして扱います)
この形の最大の特徴は、
変数分離で解ける
ということです!
前回軽くお話しましたが、変数分離とは変数を左辺と右辺で分けるという方法です!
つまり、
($x$の式)=($t$の式)
という感じにするということですね!
一般形で言えば、
$$
\begin{align}
\frac{dx}{dt}+at &=0\\
\frac{dx}{dt} &=-at\\
dx &=-atdt
\end{align}
$$
というように変形するということです!
このように変数を分離したら、両辺を積分するという流れで簡単に解くことができます!
まとめ
今回は鉛直投げ上げと斜面の運動、そして一階斉次線形微分方程式についてお話ししました!
今回のポイントは、
です!
次回は空気抵抗がある場合の運動と単振動についてお話します!
それではまた次の記事で!